ニーハオ!

めちゃくちゃチャイニーズな雰囲気がありますが
中国でもなければ、南京町でもありません
ここ、なんば↑

前回ご紹介した難波八阪神社もそうだけど
こちらも、商業地からは少しずれてるので
ぜんっぜん知らなかったんですが・・・

こちら、 瑞龍寺ずいりゅうじというお寺です
ご存じ?

(大阪市浪速区元町1-10)

鮮やかな朱色の山門は、なんとなく中国っぽくないですか
日本のお寺っていうと、言い方悪いですけど
だいたい地味な印象やん・・・?

中国人が集まるお寺なのかというと
そういうわけではなくて
「墓地・墓石」と日本語ののぼりが立ってるとおり
日本のお寺

だけどこういう建築物なのはわけがあって

その理由というのが、このお寺の宗派

黄檗おうばくって知ってるかい・・・?

***

お寺の由緒の前に、黄檗宗とは何ぞやということをちょろり

日本で一番メジャーな宗派というと
浄土宗とか、浄土真宗とか、日蓮宗とか

そのへんは歴史の授業でも必ず習いますね

あと、臨済宗と曹洞宗も、遠い昔に習った気がする
正直、わたしには違いを説明できません←

黄檗宗・・・習った気がしないんですがどうですか

この宗派の開祖は、隠元隆琦いんげんりゅうきという人物

中国福州(福建省)出身のお方で
日本にインゲン豆をもたらした人
(とはいえ、現代でインゲン豆と呼ばれるものとは違って
藤豆っていう豆らしい)

そのインゲン豆・・・じゃなくて、隠元さんは
中国では黄檗山萬福寺おうばくさんまんぷくじというお寺で住職をしていて
なかなかに有名な禅僧だったんですね

そうそう

仏教!お寺!っていうと
修行!坐禅!みたいなイメージがありますが

坐禅をするのは、臨済宗・曹洞宗・黄檗宗の3つだけなんですね

恥ずかしながら、わたくしそんなことも知らず(汗)

とにかく南無阿弥陀仏やお題目を唱えよう!とか
阿弥陀様に帰依するんだ!という他力本願の考えではなく

お釈迦様が悟りを得るのに用いた坐禅を
主要な修行法として重視したのが
いわゆる禅宗といわれるこの3宗派

坐禅にしても
臨済宗は、公案を考えながら坐禅して
曹洞宗は、ひたすら雑念を捨てて坐禅します
(公案というのは、修行僧に課される禅で考えるべき課題のこと)

そして、黄檗宗はというと
これはもともと中国では臨済宗の一派であり
独立した宗派は形成していませんでした

1654年、63歳の時に長崎の興福寺こうふくじに招かれ来日した隠元さん
当初は3年だけ滞在する予定だったのが
あれよあれよと時が経ち
1661年、将軍徳川家綱から京都の宇治に土地を与えられたので
萬福寺を開きました

このとき、隠元さんがもたらした服装や読経の仕方、
さらには寺院の建立様式全てが中国(明)風だったので
日本人からしたら真新しく見えて
日本では臨済系諸派とは異なる独立した一宗となったそう

また、坐禅の仕方も臨済宗とは少し異なってくるのかしら
隠元流の坐禅は、禅と浄土教を融合させたものなんですって

どういうことかというと

浄土宗や浄土真宗では
浄土は現世とは別の世界にあるもので
いつかその世界にたどり着けますようにと祈るわけですが

隠元さんがいうところでは
「悟りによって心の中に浄土をもつことができる」んですって

人は本来、皆仏心を持っているけど
生きていくうちに汚れてその心を忘れてしまう、と

そこで坐禅をして、己の中の仏心を見出すんや
というのが隠元さん

というわけで日本で隠元さんの宗派が確立したわけですが
黄檗宗という名前の由来はというと
隠元さんがもともといた中国の黄檗山萬福寺ですね

そもそも黄檗というのは、
日本では「きはだ」と呼ばれる樹木のことで
樹皮は生薬になって、飲むと「地上の仙人」に
なれるとかとか・・・

萬福寺のあった山には黄檗の木が繁茂していたことから
山号と宗派の由来になったそうです

***

ハイ

というわけで、黄檗宗の寺院は今でもちょっと独特で
中国から伝わった発音でお経を読んだり
中国風の建築物だったりするわけなんですね!

瑞龍寺の創建年代はわかりませんが、もとは薬師寺だったそう
そこへ、1670年に鉄眼てつがん和尚を住職にと招いて
1676年に瑞龍寺と改められました

このお方の名前から、「鉄眼寺」とも呼ばれています

鉄眼さんは黄檗宗の開祖である隠元さんに入門して
黄檗宗の不況に努めたお坊さんのひとりで
すごい偉業をなしたお方

その偉業というのが
一切経を印刷すること

一切経というのは
仏教経典のぜぇぇぇぇえええんぶのことで
その数なんと、6771巻

ひぇ・・・聞いたこともない巻数やで・・・

当寺、国内には一切経の版木がなかったそうで
こりゃいかん、ってなわけで
全国を行脚して喜捨集め(資金調達みたいなもの)

しかし、浄財が集まるも、
洪水や飢饉によって人々が苦しんでいるのを見ると
そのお金は人々の救済に使い

三度全国を駆け巡ってようやく版木を完成させたのですが

その数、約6万枚・・・!

ちなみに、その版木はどうなったかというと

6万枚のうち、4万8275枚は
日本の黄檗宗の大本山である京都の萬福寺にて
保存されているそうです!
もちろん重要文化財に指定されています!

しかし、保存のみならず
今でも、300年以上変わらぬ手法で
熟練の刷り師によって一枚一枚手刷りされているんですって・・・!
国の重要文化財よ・・・!?

ちなみに、この版木を守護している萬福寺の宝蔵院という建物は
鉄眼さんによる建立
すごい人やん・・・

こちらのお寺
観覧が自由なのか否か・・・

裏口のようなところには
「お墓参りの方はこちらからお入りください」とあって
扉は開いてそうだったのですが

少なくともわたしが訪れた時は山門が閉まっていたので
境内には入りませんでした

そんなわけで、塀の外から少しだけ写真を撮ってみました

境内側から山門を見たこちら↑
左の方に笠をかぶった人が立ってるのがわかりますか
これが、鉄眼さんの像のようです
(ネットで調べると、境内から撮影されてる方のブログなどが
ちらほらヒットしました)

そして気になる本殿がこちら↓

中国っぽい!

ところで、本殿に上がる階段の中央に何やらありますね

これ、七福神のメンバーの1人である、布袋ほていさん

布袋さんは、七福神の中でも唯一実在した人物といわれていて
南宋の高僧・契此かいしさんがモデルになったとか

契此さんはいつも大きな袋を担いで国中を旅していたため
「布袋」と呼ばれるようになったんですって

旅の途中、行く先々で貧しい人々に出会うと
都度救いの手を差し伸べ、袋の中から必要なものをあげて
救ってもらった人たちがくれたお礼をまた袋に入れて
そうして大きくなっていく袋には、
人々の感謝と慈悲の心が詰まってるのだとか

ええお話やぁ

そんな徳の高さから
契此さん、もとい布袋さんは
中国において弥勒菩薩信仰と交わって
「弥勒菩薩の化身」といわれるようになりましたとさ

日本で弥勒菩薩っていうと
スラッとししなやかなボディーで
憂いを帯びたような表情で考え事してる像が有名やん・・・?
ギャップがすごい・・・←

ともあれ
もともとお坊さんがモデルだったので
お寺で布袋さんを祀られることはしばしばあるらしく

黄檗宗に至っては、やはり中国からの要素が強いので
全ての黄檗宗の寺院に布袋さんがいるのかはわかりませんが
こうして出迎えるように鎮座されているのでしょう

そうそう

瑞龍寺にはありませんが
山門から本殿に至るまでの途中に
天王殿てんのうでんという建物があるのも
黄檗宗独特の伽藍らしく
その天王殿に祀られるのが布袋さんなんですね

瑞龍寺には天王殿はありませんが
本殿に入る前に、布袋さんがいらっしゃるというわけですね

ところで

このお寺には
龍と河童と人魚のミイラがあるらしいですよ・・・

お、おぉん・・・

現在はいずれも非公開なので見ることはできませんが
過去にはちょいちょい外部の展覧会なんかで
展示されたこともあるそうなので
どこかでお目にかかれるかもしれません

ググってみると、瑞龍寺所蔵の河童と龍のミイラの写真は出てきたので
興味ある人は検索してみてください・・・

河童については
一時期は「水神」として祀られてもいたそうで
収められている箱には「天和2年(1682年)」と記されているとか

堺の商人が奉納したものだとか
元々は千利休と近しい一族が奉納したものだとか
伝えられているようです

河童のミイラの画像はなかなか衝撃的ですよ・・・
特におめめが・・・なんとも・・・(汗)

と、いうわけで
黄檗宗と瑞龍寺のご紹介でございました

そうそう
瑞龍寺の隣には551のレストラン、パンチャンがあるので
中国気分に浸ってください~(笑)

2022.5.22 姫松なつき

〈参考文献〉
●大阪くらしの今昔館 今週の今昔館
「瑞龍寺」
http://konkon2001.blogspot.com/2020/02/blog-post_11.html

●大阪妖怪・伝承探訪
「ミイラ‐瑞龍寺(鉄眼寺)‐」
http://youkai.tou3.com/Entry/52/

●公益財団法人 全日本仏教協会
「黄檗宗」
http://www.jbf.ne.jp/member?id=15683

●法雲禅寺 ホームページ
「黄檗宗」
https://www.oubaku.org/houun/oboku.html

●黄檗宗大本山 萬福寺 ホームページ
「ほていまつり」
https://www.obakusan.or.jp/see/hotei.html

●臨済禅 黄檗禅 公式サイト 臨黄ネット
「黄檗山 萬福寺」
http://www.rinnou.net/cont_03/02manpuku/

●Japaaan
「嘘か真か!?日本に古来から伝わる河童・人魚・天狗たちのミイラまとめ」
https://mag.japaaan.com/archives/19517

●国立民族学博物館 Archives
「民俗学者の仕事場:Vol.4 近藤雅樹‐「人魚のミイラ」‐標本資料の真贋」
https://older.minpaku.ac.jp/museum/showcase/fieldnews/shigotoba/kondo/wp12

●『イラストでわかるやさしい仏教』
(監修:大角修)

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