大阪城天守閣 新館長 宮本裕次 先生 インタビュー
- 2022/5/31
- 歴史, まちの情報, イベント
- 大阪城天守閣, 宮本裕次, 北川央, “新鮮”コレクション, 大阪城天守閣4階展示室, 大阪市大礼記念事業趣意書 昭和3年8月, 大阪城天守閣鯱小型模型 今村久兵衛・今村重三郎製作
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大阪のシンボルの一つ、大阪城天守閣では4月から新館長が着任されました。新館長になられたのは、研究主幹の宮本裕次(みやもと・ゆうじ)先生。新館長のご就任を記念して、ナンジャモンジャの花が咲き誇る大阪城へ探偵旅団のにっしゃんがインタビューに行ってきました。
大型連休前に満開に咲きほこるナンジャモンジャの花と大阪城天守閣
■「親しみやすい」博物館に
にし:宮本先生、新館長ご就任おめでとうございます。
ずっと大阪城天守閣で学芸員をされてこられましたが、館長という役職に就かれてどんな変化がありますでしょうか。
宮本:やはりプレッシャーを感じますね(笑)
にし:大阪のシンボルですものね(笑)
それにイベントも多い博物館という印象がありますので、期待も大きいでしょうから。
意気込みをお聞かせください。
宮本:これからどれだけイベントの企画に貢献できるかは未知数ですが、有能なスタッフがのびのびアイデアを出していける環境を整えることが自分の役割の一つだと思っています。
にし:「盛り上げ役」にも注力されるスタンスですね。それは楽しみです。
イベントと同じく重要になるのが展示企画ですが、宮本先生の方針を伺いたいのです。
宮本:天守閣に来て「なるほど! 得した!」という気持ちになっていただく展示にしていきたいでですね。歴史の面白さ、史跡の面白さ、何か腑に落ちたという発見を呼び起こすような印象に残る展示です。「親しみやすさ」というのを一つのキーワードにしていきたいとも考えています。
にし:「親しみやすい」博物館っていうのは、私も一人の府民としていいなぁって思います。
歴史は知れば知るほど楽しくなっていきますが、難しい学問と感じている方も多いと思いますので、宮本先生の思いはそういう方たちを歴史の世界に巻き込んでいけるんじゃないかと期待できますね!
■皆さんと同じ目線で一緒に作る「みんなが主人公」の大阪城
にし:「親しみやすさ」についてもう少しお聞かせください。
宮本:発見したことを伝える時に「凄いだろう」という感じではなく、皆さんと「一緒に見つけた」という同じ目線を大事にしていきたいですね。これだけのことを見つけたんですよ、だから学芸員は凄いでしょ!というふうにはしたくないんです。
にし:歴史の研究者なので「見つけたぞ、凄いでしょ!」というのが、研究職としてはやりがいを感じる瞬間じゃないんですか?
宮本:論文で「この発見は凄いだろう」と強調する書き方もいいのですが、その印象が強すぎると読んでいてちょっと引いてしまう気分になることもあるんですよ。読む側も盛り上がるというか、上手に乗せてくれて巻き込んでくれて得した気分になりたいものです。
にし:難しいことを簡単な内容にして説明してくださると「なるほど!」って感動しちゃいますもんね。伝える工夫や努力は見えない部分ですが非常に大事なことだと思います。
宮本:博物館でもエンターテイメントの世界と同じ部分があって、学術的な事柄であっても共感しやすい内容に仕上げる工夫が必要なんですね。学芸員は研究が仕事ですが発想も「学者」になってしまうだけでなく、「発信者」としても努力していきたいと思っています。「なるほど!」を思ってもらえるようなことを【分かりやすく】伝えていかなければなりません。
にし:前館長の北川央先生もおっしゃられていましたが、伝えるためにしなければならないことっていろいろあるので、宮本先生のお考えを教えてください。
宮本:大阪城天守閣は、来てくださる方はもちろん関係者も含めていろんな人が主人公なんです。そういう思いで皆さんと一緒に大阪城天守閣の展示やイベントを作り上げていきたいと考えています。
にし:「みんなが主人公」というコンセプトなんて考えてもみなかったです!
■地元・大阪へ向けた取り組み
にし:コロナ禍でいろいろと大変ですが、今後どうやって大阪を盛り上げていきますか?
宮本:大阪城は大阪を盛り上げていく役割がありますし、大阪の盛り上がりを牽引していく立場にあると思っています。盛り上がった状態の中にいるだけではなく、先頭を切らないといけないという意識はあります。その一方、コロナ禍の状況を踏まえて、どこよりも慎重に、という意識も大事なので、上手くやっていかなければなりません。
にし:コロナ時代の館長ということで、そういう意味で難しい舵取りになりそうですね。
コロナ前には、大阪城は外国人観光客の方々で賑わっていたのがまるで嘘のようで寂しいです。
宮本:コロナ禍で外国人観光客の激減した今の状況の中で、改めて地元の方に親しまれる企画・発信ができるようにやっていくことが大事だと思っています。
にし:地元へ向けた企画ですね! それは楽しみです。
宮本:地元・大阪に向けた企画・発信を行うことが日本人・外国人関係なく人々を惹きつける内容につながっていき、そしてまた外国の観光客の方々もたくさん来ていただけるようになっていくのではないかと考えています。
にし:今回、4階展示室で開催の「大阪城天守閣“新鮮”コレクション」はまさに地元に向けた宮本先生の思いが感じられる企画じゃないでしょうか。
(展示概要は下記掲載)
大阪市大礼記念事業趣意書 昭和3年8月 【受贈初公開】「大阪城天守閣所蔵」
大阪城天守閣鯱小型模型 今村久兵衛・今村重三郎製作【受贈初公開】「大阪城天守閣所蔵」
■希望と期待の膨らむ大阪へ
にし:今後の新しい企画の構想は何かあるんですか?
宮本:感染の脅威が次第に薄れていき人の意識も変わっていく中において、大阪は万博が予定されていて特に希望や期待がある都市です。大阪城天守閣としては大阪万博に向けて友好城郭などの企画を進めていけたらと考えています。
にし:万博も絡んでくるので、大阪がより一層盛り上がるには大阪城天守閣は重要なポジションになりそうですね!
宮本:イベントが面白かった、展示が興味深かった、と思ってもらえるように、とにかく人を惹きつけることをやっていくことが必要です。皆さんを巻き込む工夫のある企画、楽しい企画をやっていきたいです。
にし:万博に向けて、そして万博以降も大阪が盛り上がっていくには宮本先生のご活躍も不可欠だと思います。期待しています。
今日は、ありがとうございました!
■インタビューを終えて
私には、まじめなで冷静な方という印象の強い宮本先生でしたが、今回の取材では胸に秘めた熱い思いを垣間見ました。魅力的な方だなと改めて思ったインタビューでした。今後の大阪城天守閣の企画が楽しみです。
■にっしゃんからのお知らせ
5月11日から始まっている企画展示「大阪城天守閣“新鮮”コレクション」は宮本先生が展示担当をされています。
今回の展示では、昭和6年(1931)に復興され今年で90周年になる大阪城天守閣の所蔵品の中で令和になってからのものも含む最近10年のうちに新たにコレクションに加わった資料が紹介されています。
個性的な「城の博物館」である大阪城天守閣の所蔵資料は豊臣時代の歴史資料、大阪郷土歴史資料、城郭参考資料、武器・武具参考資料など多彩です。今回は豊臣秀吉をはじめとする天下人の時代にかかわる重要資料、絵画や甲冑などといった美術・工芸品のほか、2021年度に寄付された復興当時の熱気を伝える資料も初公開されています。
宮本先生がインタビューで語っておられたように「大阪の皆さんと一緒に歴史を刻み、成長を続けてきた大阪城天守閣の魅力」を感じられる展示に仕上がっているのではないでしょうか。
大阪城天守閣に訪れたことのない方はもちろん、しばらく大阪城を訪れていないという方にも「新鮮」な展示内容となっていますので、是非足を運んでください。
■開催概要
1.名称:企画展示 大阪城天守閣“新鮮”コレクション
大阪城天守閣のホームページ
2.会期:令和4年5月11日(水曜日)から令和4年7月21日(木曜日)まで
3.時間:9時から17時まで ※入館は閉館の30分前まで
4.会場:大阪城天守閣4階展示室(大阪市中央区大阪城 1-1)
5.入館料:大人600円 中学生以下、大阪市在住65歳以上の方(要証明)、
障がい者手帳等ご持参の方は 無料
6.主要展示品:重要美術品 豊臣秀吉自筆書状 (慶長元年)12 月2日付 秀より宛
金札段替二枚胴具足
大阪市大礼記念事業趣意書 昭和3年8月【受贈初公開】
大阪城天守閣鯱小型模型 今村久兵衛・今村重三郎製作【受贈初公開】
※いずれも大阪城天守閣蔵
7.主催:大阪城天守閣
8.その他:新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、事業が中止・変更になる可能性や、お客様のご入館をお断りする場合があります。最新情報は大阪城天守閣ホームページをご覧いただくか、下記の問合せ先までお問合せください。
★同時期に3階では企画展示「大坂城大解剖 ~その姿と機能~」が開催されています。本展ではお城の象徴というべき天守のみならず、お城を構成するさまざまな部分に着目して、豊臣・徳川両時代の大坂城の諸相が紹介されています。
会期:令和4年5月10日(火曜日)から7月20日(水曜日)まで
主要展示品:大坂城図屏風
大坂城代屋敷絵図
※いずれも大阪城天守閣蔵
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